インテグリティな日々

『憲法ガール』著者(弁護士)の大島義則が日々思ったことを綴ります。

橋本博之『行政法解釈の基礎――『仕組み』から解く』(日本評論社,2013年)

 橋本博之先生が出された『行政法解釈の基礎――『仕組み』から解く』(日本評論社,2013年)がかなり良いので,ご紹介させていただきます。

行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く

行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く

 本書は,行政法事例問題を解く際のキーとなる思考方法を5つの「行政法思考」として整理し,この行政法思考を新司法試験や 曽和俊文ほか編『事例研究 行政法』(日本評論社,2011年)の問題を素材としながら解説する本です。
 肝心の橋本先生の提示される「行政法思考」は以下のとおりです(同書12頁)。

1 時間軸に沿った「仕組み」の解析
2 行為要件・行為内容の解析
3 規範の階層関係の解析
4 制度趣旨に照らした考察
5 基本原理に照らした考察

 これらの行政法思考はあらゆる行政法事例問題において考えて網羅的に検討するものではなく,選択的・重畳的に使い分けていくものとされます(同書13頁)。いずれも行政法をある程度勉強した者であれば当たり前の頭の使い方だと思いますが,それを5つの「行政法思考」として可視化し,かつ,それを新司法試験や『事例研究 行政法』の問題を用いて具体的に解説する点が本書の優れた部分でしょう。塩野学説の提唱した「仕組み解釈」を行政法の「ものの見方」としての「仕組み解釈」にまで昇華させた橋本先生ならではのご著書であり,「仕組み解釈」を実践的に身に付けるために最高の一冊です。
 むろん新司法試験の解説本としても優れています。新司法試験を検討していく際の「普通の」「自然な」思考方法に基づいて,最もミニマムな解答を提示していきます。橋本先生のもつ1つの解答の「筋」に基づいて解説されていくため,あっちいったりこっちいったりという多面的・多角的な解説にはなっていませんが,「普通に」「自然に」考えるとこうなるという解説が付されており,初学者が混乱せずに済む作りになっています。
 橋本先生のご執筆されている下記3つの本と複合して使えば,「行政法事例問題対策」としてはもう終わり,という感じですね。

行政法 第4版

行政法 第4版

行政判例と仕組み解釈 (行政法研究双書)

行政判例と仕組み解釈 (行政法研究双書)

行政判例ノート 第3版

行政判例ノート 第3版