インテグリティな日々

『憲法ガール』著者(弁護士)の大島義則が日々思ったことを綴ります。

2 判例集

井上典之『憲法判例に聞く―ロースクール・憲法講義―』(日本評論社,2008年)

憲法判例に聞く―ロースクール・憲法講義

憲法判例に聞く―ロースクール・憲法講義

 主要判例を深く勉強するのに良い。司法試験の勉強では「判例又は主要学説」を身に付ける必要があるが,このうち「判例」の内容や射程を深く勉強するのに優れた一冊である。日本の主要学説といえば芦部憲法を中心に形成される学説群を指すが,憲法の領域では判例と学説が鋭く対立する場面が多い。そのため芦部学説とは独立して,判例が形成する憲法の価値体系すなわち「憲法実体論」を学ぶ必要が強い。憲法実体論の構築の必要性は井上典之先生が繰り返し述べられているところではあるが,本書はそれに自ら模範を示す形で「憲法実体論」を構築している。判例相互の有機的関連性から判例の背後に潜む「憲法実体論」を炙り出し,判例の形成する価値体系を開示すると同時に,その射程を操作する手法は,まさに職人芸であろう。

野坂泰司『憲法基本判例を読み直す』(有斐閣,2011年)

憲法基本判例を読み直す (法学教室ライブラリィ)

憲法基本判例を読み直す (法学教室ライブラリィ)

 こちらも主要判例を深く勉強する教材として良い。司法試験委員の手によるものであり,井上典之『憲法判例に聞く―ロースクール・憲法講義―』(日本評論社,2008年)よりも中立的な記述となっている印象である。

棟居快行ほか編『プロセス演習憲法 第4版』(信山社,2011年)

プロセス演習 憲法【第4版】

プロセス演習 憲法【第4版】

 主要判例について判例原文を読むのが大変だ,面倒くさいという方に,おすすめの本。判例原文が多く引用されているだけではなく,判例における憲法上の攻撃防御方法が分かりやすい形になっている。書く判例に付された解説論文は学術的にも価値の高いものばかりであり,本書でしか得られない知識も多数あるので,必携であろう。

長谷部恭男ほか編『憲法判例百選Ⅰ・Ⅱ[第6版]』(有斐閣,2013年)

 紹介するまでもないが,多くの憲法判例に目を通すならば,これ。解説は玉石混交と言われることもあるが(私は特に気にならないが),ここに掲載されている判例から問題が出題された場合には誰も何も文句が言えないことになっている。そういう意味で持っていないといけない本である。

『最高裁時の判例』(有斐閣)シリーズ

最高裁時の判例―平成元年~平成14年 (1) (ジュリスト増刊)

最高裁時の判例―平成元年~平成14年 (1) (ジュリスト増刊)

最高裁時の判例 5―平成15年~平成17年 (ジュリスト増刊)

最高裁時の判例 5―平成15年~平成17年 (ジュリスト増刊)

最高裁 時の判例(平成18年?平成20年)6 (ジュリスト増刊)

最高裁 時の判例(平成18年?平成20年)6 (ジュリスト増刊)

 ロースクールでは最高裁調査官解説の勉強が重視されるが,調査官解説に直接当たるのが大変だ,面倒だ,というときに参照するもの。便利。

『重要判例解説』(有斐閣)シリーズ

 司法試験受験の年ぐらいは買って,ざっと読むのが良いであろう。憲法に限らないが。