インテグリティな日々

『憲法ガール』著者(弁護士)の大島義則が日々思ったことを綴ります。

4 演習書その他

 憲法の事例演習書については色々と優れたものが出ており,一長一短なので,好きにピックアップして勉強するほかない。目新しい事例演習書に飛びつく前にやるべきは司法試験の過去問であるとは思う。

■木下智史ほか編著『事例研究 憲法(第2版)』(日本評論社,2013年)

事例研究 憲法 第2版

事例研究 憲法 第2版

■小山剛『「憲法上の権利」の作法[新版]』(尚学社,2011年)
「憲法上の権利」の作法 新版

「憲法上の権利」の作法 新版

■宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開』(日本評論社,2011年)
憲法 解釈論の応用と展開 (法セミ LAW CLASS シリーズ )

憲法 解釈論の応用と展開 (法セミ LAW CLASS シリーズ )

■木村草太『憲法の急所』(羽鳥書店,2011年)
憲法の急所―権利論を組み立てる

憲法の急所―権利論を組み立てる

駒村圭吾『憲法訴訟の現代的転回』(日本評論社,2013年)

3 コンメンタール

普段の勉強で参照する必要はないが,ロースクールの課題など少し時間をかけて勉強するときには以下のコンメンタールに当たるのも良い。芹沢斉ほか『新基本法コンメンタール憲法』(日本評論社,2011年)はコンパクトだが濃密で素晴らしい出来なので,辞書用に1冊もっておくと勉強がはかどるかもしれない。ただ受験生が読んで頭に残るかというと,情報量が多すぎるので,難しいかもしれない。あくまで深く深く勉強するツールという位置づけ。

樋口陽一ほか『憲法Ⅰ〜Ⅳ』(青林書院,1994年,1997年,1998年,2004年)
■芹沢斉ほか『新基本法コンメンタール憲法』(日本評論社,2011年)

新基本法コンメンタール憲法―平成22年までの法改正に対応 (別冊法学セミナー no. 210)

新基本法コンメンタール憲法―平成22年までの法改正に対応 (別冊法学セミナー no. 210)

2 判例集

井上典之『憲法判例に聞く―ロースクール・憲法講義―』(日本評論社,2008年)

憲法判例に聞く―ロースクール・憲法講義

憲法判例に聞く―ロースクール・憲法講義

 主要判例を深く勉強するのに良い。司法試験の勉強では「判例又は主要学説」を身に付ける必要があるが,このうち「判例」の内容や射程を深く勉強するのに優れた一冊である。日本の主要学説といえば芦部憲法を中心に形成される学説群を指すが,憲法の領域では判例と学説が鋭く対立する場面が多い。そのため芦部学説とは独立して,判例が形成する憲法の価値体系すなわち「憲法実体論」を学ぶ必要が強い。憲法実体論の構築の必要性は井上典之先生が繰り返し述べられているところではあるが,本書はそれに自ら模範を示す形で「憲法実体論」を構築している。判例相互の有機的関連性から判例の背後に潜む「憲法実体論」を炙り出し,判例の形成する価値体系を開示すると同時に,その射程を操作する手法は,まさに職人芸であろう。

野坂泰司『憲法基本判例を読み直す』(有斐閣,2011年)

憲法基本判例を読み直す (法学教室ライブラリィ)

憲法基本判例を読み直す (法学教室ライブラリィ)

 こちらも主要判例を深く勉強する教材として良い。司法試験委員の手によるものであり,井上典之『憲法判例に聞く―ロースクール・憲法講義―』(日本評論社,2008年)よりも中立的な記述となっている印象である。

棟居快行ほか編『プロセス演習憲法 第4版』(信山社,2011年)

プロセス演習 憲法【第4版】

プロセス演習 憲法【第4版】

 主要判例について判例原文を読むのが大変だ,面倒くさいという方に,おすすめの本。判例原文が多く引用されているだけではなく,判例における憲法上の攻撃防御方法が分かりやすい形になっている。書く判例に付された解説論文は学術的にも価値の高いものばかりであり,本書でしか得られない知識も多数あるので,必携であろう。

長谷部恭男ほか編『憲法判例百選Ⅰ・Ⅱ[第6版]』(有斐閣,2013年)

 紹介するまでもないが,多くの憲法判例に目を通すならば,これ。解説は玉石混交と言われることもあるが(私は特に気にならないが),ここに掲載されている判例から問題が出題された場合には誰も何も文句が言えないことになっている。そういう意味で持っていないといけない本である。

『最高裁時の判例』(有斐閣)シリーズ

最高裁時の判例―平成元年~平成14年 (1) (ジュリスト増刊)

最高裁時の判例―平成元年~平成14年 (1) (ジュリスト増刊)

最高裁時の判例 5―平成15年~平成17年 (ジュリスト増刊)

最高裁時の判例 5―平成15年~平成17年 (ジュリスト増刊)

最高裁 時の判例(平成18年?平成20年)6 (ジュリスト増刊)

最高裁 時の判例(平成18年?平成20年)6 (ジュリスト増刊)

 ロースクールでは最高裁調査官解説の勉強が重視されるが,調査官解説に直接当たるのが大変だ,面倒だ,というときに参照するもの。便利。

『重要判例解説』(有斐閣)シリーズ

 司法試験受験の年ぐらいは買って,ざっと読むのが良いであろう。憲法に限らないが。

1 基本書

芦部信喜高橋和之補訂)『憲法[第5版]』(岩波書店,2011年)

憲法 第五版

憲法 第五版

 いわずと知れた芦部憲法。憲法学において「伝統的通説」,「支配的見解」といえば,芦辺説を指す。司法試験の憲法においては「判例又は主要学説」に基づく論述が要求されるが,ここでいう「主要学説」とは芦部説のことと言っても差し支えない。もっとも本書は憲法学全体を勉強するためには薄く,「行間を読む」必要があると言われる。また芦部先生亡き後の判例・学説等の変遷を十分に本書だけではフォローアップできないこともある。そのため,これらの点は他の基本書で補充しながら勉強する必要はある。

佐藤幸治日本国憲法論』(成文堂,2011年)

日本国憲法論 (法学叢書 7)

日本国憲法論 (法学叢書 7)

 
 芦部憲法と双璧をなす佐藤憲法。佐藤幸治先生の基本書といえば青林書院の『憲法』(1995年)であったが,2011年についに待望の基本書が出された。青林書院の『憲法』のほうは人格的自律権に基づくトップダウン式の理論体系が開示されており,佐藤先生の理論体系は理解しやすいが,本書のほうは多数の判例に網羅的に言及するとともに綺麗に整理されており,いわばボトムアップ式の本といえる。本書は青林書院の本と比較すると,実務にも配慮した簡易な記述が心がけられていると思うが,その背景には禍々しいほど圧倒的な思考の渦が潜んでいるように思われる。芦部憲法についても現代憲法学の立場からの「読み替え」や「再解釈」がよく行われるが,今後は佐藤憲法についても本書それ自体を対象とした解釈学が形成されていくのではないか(例えば,土井真一「憲法訴訟の当事者適格論の検討」法学教室384号72頁の佐藤学説の再解釈などが今後展開されていくことと思われる)。
憲法 (現代法律学講座 5)

憲法 (現代法律学講座 5)

野中俊彦=中村睦男=高橋和之=高見勝利『憲法Ⅰ・Ⅱ[第5版]』(有斐閣,2012年)

憲法1 第5版

憲法1 第5版

憲法2 第5版

憲法2 第5版

 野中俊彦,中村睦男,高橋和之,高見勝利の各先生方4人の共著であるため,通称「4人本」と呼ばれる。芦部学説との親和性が高い上に,共著であるため客観的・中立的な記述に努められている。記述の客観性・中立性や情報量も多さから,択一用勉強用に備えておくと便利である。

その他(高橋憲法,長谷部憲法,松井憲法,渋谷憲法等)

立憲主義と日本国憲法 第3版

立憲主義と日本国憲法 第3版

憲法 (新法学ライブラリ)

憲法 (新法学ライブラリ)

日本国憲法 第3版

日本国憲法 第3版

憲法 第2版

憲法 第2版

 司法試験では「判例又は主要学説」に基づく勉強が求められるため,基本的には芦部憲法や佐藤憲法をマスターすべきであるが,さらにその上で現代の憲法学が何を考えているのかを知ることは有用である。高橋憲法,長谷部憲法,松井憲法,渋谷憲法……と百家争鳴状態の憲法学説に目を向けることで,多角的な視点が養われるかもしれない。

橋本博之『行政法解釈の基礎――『仕組み』から解く』(日本評論社,2013年)

 橋本博之先生が出された『行政法解釈の基礎――『仕組み』から解く』(日本評論社,2013年)がかなり良いので,ご紹介させていただきます。

行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く

行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く

 本書は,行政法事例問題を解く際のキーとなる思考方法を5つの「行政法思考」として整理し,この行政法思考を新司法試験や 曽和俊文ほか編『事例研究 行政法』(日本評論社,2011年)の問題を素材としながら解説する本です。
 肝心の橋本先生の提示される「行政法思考」は以下のとおりです(同書12頁)。

1 時間軸に沿った「仕組み」の解析
2 行為要件・行為内容の解析
3 規範の階層関係の解析
4 制度趣旨に照らした考察
5 基本原理に照らした考察

 これらの行政法思考はあらゆる行政法事例問題において考えて網羅的に検討するものではなく,選択的・重畳的に使い分けていくものとされます(同書13頁)。いずれも行政法をある程度勉強した者であれば当たり前の頭の使い方だと思いますが,それを5つの「行政法思考」として可視化し,かつ,それを新司法試験や『事例研究 行政法』の問題を用いて具体的に解説する点が本書の優れた部分でしょう。塩野学説の提唱した「仕組み解釈」を行政法の「ものの見方」としての「仕組み解釈」にまで昇華させた橋本先生ならではのご著書であり,「仕組み解釈」を実践的に身に付けるために最高の一冊です。
 むろん新司法試験の解説本としても優れています。新司法試験を検討していく際の「普通の」「自然な」思考方法に基づいて,最もミニマムな解答を提示していきます。橋本先生のもつ1つの解答の「筋」に基づいて解説されていくため,あっちいったりこっちいったりという多面的・多角的な解説にはなっていませんが,「普通に」「自然に」考えるとこうなるという解説が付されており,初学者が混乱せずに済む作りになっています。
 橋本先生のご執筆されている下記3つの本と複合して使えば,「行政法事例問題対策」としてはもう終わり,という感じですね。

行政法 第4版

行政法 第4版

行政判例と仕組み解釈 (行政法研究双書)

行政判例と仕組み解釈 (行政法研究双書)

行政判例ノート 第3版

行政判例ノート 第3版

黒澤@永田町

美味しいとんかつが食べたい!

ということで,永田町黒澤(http://r.gnavi.co.jp/g342200/)に行ってきました。
ネット上の情報によれば,世界の黒澤監督が客人をもてなす際にふるまったとんかつを再現しているのだとか。
ロースとんかつメンチ付で1,560円です。
メンチカツ抜きだと確か1,200円ですが,絶対にメンチカツも美味しいので食べるべき。アツアツサクサクです。
黒ゴマのソースか,トマトとはちみつのソースをかけて食べるのですが,黒ゴマソースのほうが好みでしたね。

食器,メンチカツが入っている紙袋,お箸,メニュー……など細部まで世界観が作り込まれており,見ているだけでも楽しい一品です。